今年度も凍結条件当は平成12年度と同様である。平成12年度の報告では、ある特定の凍結保存を行った骨膜からは非凍結骨膜と同程度に骨の新生が可能であることが確かめられた。凍結保護剤として12%ジメチルスルフォキシド(DMSO)のみを用いたもの(D群)は、DMSOに50%(V/V)鶏卵黄を添加した保護剤を用いたもの(D+E群)に比較して骨形成能はやや劣っていた。凍結保護剤への卵黄添加は、融解後の新生骨形成率向上に有用であった。その機序を検討するため、卵黄の精製物として入手可能な精製卵黄油、精製レシチン(フォスファチジルコリン)を卵黄の代わりに添加しても保護効果を認めたが、全卵黄のほうが保護効果が高かった。浮遊細胞においてはDMSOが細胞内に浸透して保護効果を発揮するのに対し、卵黄は細胞膜を保護すると考えられている。卵黄中の何が組織の保護に有用であるかを、今回は電子顕微鏡(TEM)を用いて微顕学的に検討した。TEM像ではD群の骨膜cambium layer表層の細胞構築は細胞間質の構造は配列が乱れ、細胞も不整型でミトコンドリアをはじめとする細胞内小器官の膨化や変性が認められた。D+E群では表層に近い細胞構造はD群と同様の所見であったが、深層の細胞は細胞内小器官に軽度の膨化は認めるものの、細胞膜、細胞接着装置は比較的良く保たれていた。以上より卵黄は組織の凍結保存に際し、組織の表層を保護し深部の組織構築を温存する作用があると考えられる。 同様の実権系で6mm長の骨膜付きの骨の凍結保存を行った。10日間の培養で非凍結群は良好な骨の肥大が認められた。急速凍結群では培養骨は壊死の状態で骨の新生は見られなかった。D群、D+E群ではコントロール群ほどではないが骨の肥大が認められた。今回は両群間の比較で、骨膜の場合と違いD群の方がやや骨肥大は良好であった。骨膜と骨に対する卵黄の影響の差は今後の検討を要する。 今回更に、15日鶏胚の大腿骨下端を用いて同様の凍結条件で凍結保存を行い、軟骨組織の凍結保存が可能かどうかを検討した。非凍結のコントロール群では、培養骨端は長軸、横径ともに成長し軟骨染色も良好であった。急速凍結群では壊死となり、成長は認められない。D群、D+E群では中等度の成長を認め、軟骨の染色性も比較的保たれていた。D群の方が良好であった。以上より幼弱骨端部軟骨はDMSOを凍結保護剤として用いプログラムフリーズすることにより、部分的にではあるがviabilityを温存して凍結保存が可能であることが示された。 今後、超速凍結法(植氷)で各組織を凍結保存して、プログラムフリーズ法とのviabilityの比較を行う予定である。
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