研究概要 |
これまでの我々の研究から、RAにおける軟骨および軟骨下の骨髄との間で生じている病態ならびに免疫応答を抑制すれば、RAにおける進行性の関節破壊が抑制される可能性を見い出している。近年報告されたOst eoclastgenesis inhibitory factor(OCIF)は、破骨細胞形成の誘導に必須な因子として同定されたOst eoclast differentiation factor(ODF)に結合して破骨細胞の形成を抑制するデコイ受容体である。そこで、本研究では、RAの病態モデルの一つであるラットのコラーゲン関節炎(CIA)にOCIFを投与し、OCIFによるRAの軟骨および軟骨下の骨髄間の生じる病態の抑制を試み、RAの関節破壊に対する治療への可能性を検討した。 ラットCIAに投与するOCIFはrecombinant human OCIFを用いた。また、OCIFの生体内投与後の分布と局在を検討するため、その一部について、Biotin-On TM phosohoamiditeを用いてビオチンラベルした。本実験に使用するのと同一な体重、週齢のメスのラットに、5mgのビオチンラベルしたOCIFを筋肉内注入法により投与し、6ならびに24時間後に手足のPIP、MP関節を採取した。これらの組織をmicrowave法を用いて直ちに固定・脱灰の後、切片を作製、fluorescein-avidin conjugatesを用いて染色し、OCIFの分布・局在について検討した。ラットCIAへのOCIFの投与は上野を中心に行なった。ラットCIAを作製、OCIFは、感作後0日目より1日2回15日連続で、1回2.5mgあるいは5mgを筋肉注入法により投与する。対照には、同量の溶媒を筋肉内注入法により投与する群および無処置群を設定する。週1回関節炎の程度をスコアリングするとともに、軟X線撮影による骨・関節破壊の進行度の評価を行った。また、血清を採取し、OCIF濃度、血清Ca値の測定ならびに抗II型コラーゲン抗体価の変動についてELISA法を用いて測定した。感作後5週、OCIFの投与終了後3週時に手足のPIP,MP関節あるいは膝関節を採取し、組織学的検索のための固定処置を行なった。 対照群のラットでは、感作後7日目にIgM型、次いで10日目にはIgG型の抗ウシならびに抗ラットII型コラーゲン抗体価が上昇した。感作後2週には関節炎が発症し、その後経時的にpaw volumeの増加が観察された。これに対して、OCIF投与群では関節炎の発症はわずかに抑制された。II型コラーゲン抗体産生においては、IgG型の抗ウシII型コラーゲン抗体価には明らかな変化は認めないものの、抗ラットII型コラーゲン抗体価は対照群に比べわずかに低値を示した。
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