研究概要 |
変形性関節症の発症には関節軟骨に対する機械的ストレスが重要な働きをする.しかし,この機械的ストレスがどのような機構で軟骨破壊を惹起するかは不明であった.福田は以前より機械的ストレスに対する軟骨代謝の変化を細胞レベルで検討してきた.またスーパーオキサイド,一酸化窒素(NO)などに代表される種々の活性酸素が軟骨代謝に影響を及ぼすことも明らかにした.最近では過酸化水素(H202)が軟骨細胞のアポトーシスを誘導することを証明した.そこで本研究は,1.軟骨細胞に対する機械的ストレスが軟骨細胞のアポトーシスを誘導することを証明し,2.その過程に活性酸素が関与することを明らかにすることを目的とした.軟骨細胞に周期的牽引負荷を加えるためにFlexercell strain unitを使用してきた.今回従来のFX-2000をFX-3000にバージョンアップし,軟骨細胞に周期的牽引負荷を加え,その代謝の変化を検討する.軟骨細胞としてヒト・ウシ関節軟骨を使用する.まず基礎的代謝の変化を検討することを目的に,ウシ軟骨細胞に5%の周期的牽引負荷を加え,プロテオグリカン合成能とNOの産生を検討した牽引負荷によりプロテオグリカン合成能は亢進した.一方アポトーシスに関しては,種々の条件で軟骨細胞に機械的ストレスを負荷しても認められなかった.そこで軟骨細胞のアポトーシスを誘導するNO産生に注目した.NO産生は機械的負荷により増加した.これはmRNAレベルでも明らかであった.NOを抑制してもプロテオグリカン合成能に変化はなかった.したがって,これまでのNOが軟骨変性を惹起する最も重要なガスメディエータとする概念に反する興味深い知見が得られた.
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