研究概要 |
フランスのカロー研究所で生体吸収性リン酸カルシウムセメント(ブラッシャイトセメント)の基礎研究を行い,この多孔体セメントが他のリン酸カルシウムセメントと異なり短時間に吸収され骨置換されることを発見した。 近畿大学では、このブラッシャイトセメントに骨形成蛋白(rhBMP-2)を添加し、骨形成の遅いヒトでも少ないrhBMP-2の添加で短時間に豊富な骨形成を生じ、早期に吸収される人工骨の開発を目指した。まず、ラット大腿骨骨欠損モデルを用いて実験を行った。セメントを円筒形にして内壁にBMPを浸潤させれば、BMPの保持とセメント表面積の増加が得られ、セメントから放出されるカルシウム、リンイオンによる刺激により少ないBMP量でも豊富な骨形成が得られることがわかった。次に、犬尺骨骨欠損を用いた実験でも、同様の短時間の豊富な骨形成を確認した。 今回、BMP感受性が高い骨髄細胞を培養しブラッシャイトセメントに添加して、より少ないBMP使用量でも有効な骨誘導が得られるか確認する実験を行った。フィッシャーラット背部皮下にセメント円盤+5μg rhBMP-2+骨髄細胞10^4個、セメント円盤のみ、セメント円盤+5μg rhBMP-2、セメント円盤+骨髄細胞、5mm type-1コラーゲン+5μg rhBMP-2、5mm type-1コラーゲンを移植した。4,8週後に屠殺し骨形成量を比較した。type-1コラーゲンでは5μg rhBMP-2添加では骨形成は生じず、セメント円盤+5μg rhBMP-2+骨髄細胞群はセメント円盤+5μg rhBMP-2群、骨髄細胞群に比べて有意に多い骨形成を示し、成熟した骨形成を示した。以上より、骨髄細胞の添加はブラッシャイトセメント-rhBMP-2の骨形成に必要なBMP量を低減するのに有効な方法であることが確認できた。
|