研究概要 |
生後12-15週(体重25-30g)の野生型およびIP受容体欠損(IP^<-/->)、マウスを使用し、左総頸動脈を内頸動脈と外頸動脈との分岐部において完全結紮した。結紮4週後に左心室から10%ホルマリンを注入し灌流固定を行い、左総頸動脈と腕頭動脈を摘出した。結紮部位、または内頸動肺と外頸動脈との分岐部から2mmの近位側から組織標本の作製を開始し、標本は50μm間隔で2mmわたり40枚作製した。ヘマトキシリン・エオジン染色を行い、2mmおよぶ血管標本の血管径、内膜層(内弾性板より内側部分)および中層面積(内弾性板と外弾性板との間の部分)を計測し、形態学的に5段階に分類した。それぞれの段階に特徴的な標本を2枚ずつ選び出し、血管径と各面積の平均値を算出した。 非結紮側の頸動脈には野生型とIP^<-/->形態学的な違いは見られなかった。野生型では頸動脈結紮後4週間の血流遮断により、血管内腔は非結紮側の40%に減少し、IP^<-/->では38%となった。血流遮断により新生内膜の形成と中層の肥厚が見られ、その程度はIP^<-/->マウスで有意に大きくなった(P<0.01)。また血管内層と中層との面積比は頸動脈の結紮4週で有意に増加し、その程度はIP^<-/->マウスでは野生型に比べ有意に大きくなった(P<0.0001)。 以上のことから、頸動脈結紮による血流遮断は血管内腔を減少させ,内膜層の面積を増加させることとなった。さらにこの血流遮断による血管壁の変化は、IP受容体欠損マウスでは強くあらわれることが判明した。このことから血流変化に伴う血管リモデリングにおいて、内因性PGI_2が重要な役割を担っていることが推察された。
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