睡眠と麻酔は一過性の意識消失を伴うという共通点があるため、睡眠調節機構と麻酔メカニズムの関連は非常に興味深い。しかしながら、これまでこれら2つの現象の相互関係を詳細に検討したものはほとんどなかった。本研究は、生理的睡眠を増幅させるさまざまな刺激が、麻酔薬の作用に与える影響を調べることによって、睡眠と麻酔の関係をより明らかにしようとする試みであった。 まず、最もよく研究されている内因性睡眠調節物質であり、かつ病的睡眠でその主体をなすと考えられている腫瘍壊死因子とインターロイキン-1のサイトカイン、と静脈麻酔薬の相互作用をラットを用いて検討した。結果として、脳室内または腹腔内に投与されたこれらのサイトカインは・静脈麻酔薬ケタミンとプロポフォールの麻酔作用時間短縮した。 次に、生理的睡眠を増強する刺激である断眠が、麻酔薬の作用にどのような影響を及ぼすか、ラットを用いて検討した。結果、断眠時間が長くなるにつれ静脈麻酔薬ケタミンとプロポフォールの麻酔作用時間が延長することが解った。すなわち、生理的睡眠を刺激することによって麻酔薬の作用が増強することが示唆された。
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