研究概要 |
【背景】出血性ショックにおいて、返血時にNOドナーであるSNAP(S-nitroso-N-acetylpnicillamine)を投与すると、循環が維持され死亡率が低下することが報告されている(Symington PA Meth Find Exp Clin Pharmacol 14:789,1992)。この報告で小腸での好中球のマーカーエンザイムの集積がSNAP投与により抑制されることを示し、NOが好中球の組織への集積を抑制することにより保護的に作用したと予測している。しかしこれまで出血性ショックにおいて、NOドナー投与が微小循環、特に好中球の血管壁への接着・血管外遊走に影響を及ぼすか否かについて直接生体顕微鏡を用いて調べた報告はない。 【目的】NOドナーSNPの白血球の血管壁接着、血管外遊走に及ぼす影響を調べる。 【方法】対象:雄ラット(200-300g)28匹。麻酔:ペントバルビタール筋肉内投与、気管切開、人工呼吸。カニュレーション:総頚動脈、外頚静脈。測定項目:腸間膜静脈脈の血管径、血流速度、白血球のローリング数、吸着数、及び血管外遊走数、血圧(総頚動脈)。 プロトコール I群(n=7)生理食塩水を投与し、脱血は行わずタイムコントロール(I)とする。 II群(n=7)SNP(0.1μg/kg/hr)を投与し、脱血は行わずタイムコントロール(II)とする。 III群(n=7)脱血により血圧を40mmHg台に1時間保ち返血。 IV群(n=7)SNP(0.1μg=/kg/hr)を投与しIII群と同様に血圧を低下させ上記測定項目の測定。 【結果】返血後の白血球の接着数、血管外遊走数はIV群でIII群に比して有意に少なかった。 【結論】SNPは出血性ショック後の白血球接着、血管外遊走を抑制する。
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