本研究では、陽圧人工呼吸に伴う肺傷害において、部分液体換気法が肺保護効果を示すかどうかを検討した. 1.^1H磁気共鳴画像法による呼吸メカニクスの検討 傷害肺に人工呼吸を行うとき、含気が不均等になることが肺傷害の増悪因子となる.部分液体換気法による含気の改善を調べるために、気道内圧の上昇に伴う含気量の変化を磁気共鳴画像法により検討し、肺組織をホモジェナイズしたサンプルで測定したサイトカイン(TNFα、IL1、IL6)からもとめた肺傷害の重症度との関連を検討した。部分液体換気法により、肺の含気の改善が認められたが、肺組織中から検出されたサイトカインには換気法のちがいによる有意差はみとめられなかった。部分液体換気法群で合わせて行ったF19磁気共鳴画像法による検討では、背側の肺領域での含気が証明されなかったため、部分液体換気法における含気の改善が、必ずしも、傷害のある部分すべての含気を改善したとはいえず、このことが、サイトカインの改善にまでいたらなかった原因と考えられた. 2.肺胞上皮機能に対する保護的効果の検討 II型肺胞上皮細胞は肺胞内のFluid Clearanceで重要な機能を果たしているが、人工呼吸によりその機能が損なわれるといわれている。部分液体換気法の施行により肺胞上皮の機能障害がどの程度維持されるかをラットを用いて検討した。肺を生食で洗浄した後、高一回換気量の人工呼吸を4時間つづけ、その後、部分液体換気群と対照群で^<125>Iを含むリンゲル液を肺胞中に注入することにより、肺胞での水分クリアランスを測定した.対照群では、未処置のラットに比べて有意に水分クリアランスが低下したが、部分液体換気法は、これを部分的に改善した. 部分液体換気法は、肺の含気・上皮機能に対して改善作用があるが、肺全体でのサイトカインの発現量(肺傷害の重症度)を変化させるにはいたらなかった.
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