研究概要 |
前年度の結果から、血管収縮薬(PGF2α、10-5M)投与による収縮(Ca感受性亢進)は、低分子量GTP結合タンパクRhOA、及びその下流の酵素Rho-kinaseを介していること、静脈麻酔薬ケタミシ、サイアミラール(各0.1、0.3mM)の投与により影響を受けないことが解った。そこで本年度は、静脈麻酔薬プロポフォールについても検索し、さらにケタミンがミオシン脱リン酸化酵素活性におよぼす影響について、また、ブタ脳血管では未だ明らかでない、低分子量GTP結合タンパクRhoA、Rho-kinaseの細胞内動態について解析を試みた。 (実験1)脳血管平滑筋細胞膜無傷標本における収縮に及ぼす静脈麻酔薬プロポフォールの影響 40mMK刺激による収縮は濃度依存的に、PGF2α、10-5M投与による収縮は、100, 300μMの高濃度プロポフォールで抑制された。 (実験2)脳血管平滑筋細胞膜可透過標本における収縮に及ぼす静脈麻酔薬プロポフォールの影響 A)溶液のCa濃度300nM、血管収縮薬(PGF2α、10-5M)投与による収縮、細胞内のGTP結合タンパクを活性化するGTP_γS投与による収縮、B)溶液のCa濃度0.03mM時のCa依存性張力(最大張力)を測定した。PGF2α、10-5M投与、GTP_γS投与により、pCa6.5において(pCa=-log([Ca2+])、収縮が得られたが、これは、静脈麻酔薬プロポフォール(100μM)投与により形響を受けなかった。最大張力は、プロポフォール(100, 300μM)により影響を受けなかった。 (実験3)ミオシン脱リン酸化酵素活性におよぼすケタミンの影讐 ミオシン軽鎖リン酸化酵素抑制下弛緩反応に及ぼすケタミンの影響を検索した。pCa4.5で最大収縮を得た後、MLCK抑制薬ML-9の存在下に10mM EGTA含有Ca除去溶液中における弛緩速度(半減期T1/2)に対するケタミンの影響を観察した。半減期T1/2は、ケタミン0.3mMにより有意に短縮した。 (実験4)低分子量GTP結合タンパクRhoA、Rho-kinaseの細胞内動態 ウエスクンブット法により細胞内でのRhoA、Rho-kinaseの動態検討した.他種の血管と同様、ブタ脳血管にもRhoA、Rho-kinase、GDP結合型RhoAと結合するRho-GDl(細胞質にのみ存在)が存在し、非刺激時は、RhoAは、細胞質分画に約80-90%と膜分画に10-20%、Rho-kinase(Rock ll)は、各分画に50%存在した。GTPγS投与により、RhoAは、膜分画に50%以上移動した。Rho-kinase(Rock ll)については、GTPγS投与により一定の傾向が認められなかった。
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