研究概要 |
1 胎便によるサーファクタントの活性阻害に対するデキストランの効果:胎便吸入症候群(MAS)患者でサーファクタントの機能異常が認められることから,胎便によるサーファクタント阻害をデキストランが打ち消すか否かを検討した。気泡型表面張力計を用いた実験で,デキストランが胎便による活性阻害を量依存性に打ち消すことが示された。 2 デキストランを添加したサーファクタントの治療効果の検討:実験的MASを呈したラットでデキストランによるサーファクタント補充療法がブタ加工型サーファクタントの効果を増強するか否かを検討した。サーファクタント(200mg/kg)を単独で投与した場合,動脈血酸素分圧(PaO_2)は治療後1時間で300mmHgに上昇して,以後徐々に低下した。一方,デキストラン(30mg/ml)を添加したサーファクタントの投与によりPaO_2は400mmHgに上昇して治療後3時間まで300mmHg前後に維持され,サーファクタント単独と比べ有意に高い値を示した。 3 合成サーファクタントの開発:リジンとロイシンの繰り返し構造からなるペプチド(KL_4ペプチド)を合成した。金沢大学で開発した合成リン脂質にKL_4ペプチドを加えて作成した合成サーファクタントは,気泡型表面張力計で,10mN/m以下の最小表面張力を示した。しかし,最大表面張力は40mN/mにしか低下しなかった。次に,KL_4ペプチドにパルミチン酸を結合させたペプチドを作成した。パルミチン酸結合ペプチドを合成リン脂質に添加した場合は,最小表面張力は5mN/m以下に低下した。パルミチン酸の添加がペプチドの生理活性を改善すると考えられた。
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