1.実験的胎便吸人症候群(MAS)ラットに対するサーファクタントの吸入の効果: MASを惹起したラットでサーファクタンとの気管内直接注入法(注入法)と吸人法による投与の効果を比較した。注入法によって血圧が変動したのに対して、吸入法では血圧が変動しなかった。注入法により動脈血酸素分圧(PaO2)は100mmHgから300mmHgに上昇した。吸入法によりPaO2が280mmHgに改善した。吸入法は、血圧の変動をおこさないから繰り返し治療に適していると考えられた。 2.塩酸ミルクによる実験的急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に対するデキストラン吸入療法の効果: 塩酸ミルクの投与により実験的ARDSを呈したラットでサーファクタントの15分間の吸入をおこなうことによりPaO2が90mmHgから300mmHgに上昇したが、吸入終了後直ちに低下し始めた。一方、サーファクタントに引き続いてデキストランを30分間吸入させた動物では、PaO2が180分間250mmHg以上に維持された。この結果から、デキストランはサーファクタント吸入の効果を増強させると結論された。 3.合成サーファクタントの生理的効果の検討: リジンとロイシンの繰り返し構造からなるペプチドにパルミチン酸を付加したペプチド(KL_4-PLM ペプチド)を金沢大学で開発した合成リン脂質に加えて合成サーファクタントを作成した。ウサギ未熟胎仔を25cmH2Oの気道内圧で換気した際の換気量は1ml/kg未満であるが、合成リン脂質を投与した動物では5ml/kg前後に改善した。一方、KL_4-PLM ペプチドを加えた合成サーファクタントを投与した動物では10ml/kg前後に有意に(P<0.05 vs. 合成リン脂質のみ)改善した。前年度に開発した金沢大学の合成ペプチドが生理活性を有することが確認された。
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