研究概要 |
未熟ウサギで,金沢大学で作製したサーファクタント蛋白C類似ペプチドを合成リン脂質に加えて作製した合成サーファクタントの効果を検討した.ブタ肺由来の加工型サーファクタントを投与した動物は最大吸気圧25cmH20で20ml/kgの一回換気量(TV)が得られた.合成サーファクタントでは10ml/kg前後でありリン脂質単独(4ml/kg)よりも優れていたが,ブタ加工型よりは有意に劣っていた.合成サーファクタントにデキストランを加えることによりTVは14ml/kg前後に改善したが,加工型サーファクタントよりは劣っていた.このことから,合成ペプチドはリン脂質の表面活性を有意に改善することおよび,デキストランの添加が合成サーファクタントの効果を改善すると結論された.しかし,ブタ加工型サーファクタントに近い活性を得るためには,さらに改善する必要があると考えられた.研究代表者はスウェーデンのカロリンスカ大学に留学し,合成サーファクタントの活性を改善するためにリン脂質の組み合わせを検討した.ディフォスファチジルパルミトイルコリン(DPPC):卵黄フォスファチジルグリセロール(PG),DPPCとPGにパルミチン酸を加えたもの,DPPCとPGおよび卵黄フォスファチジルコリンの混合物にブタSP-Cを2%加えて作製した半合成サーファクタントの表面張力を3mg/mlの濃度でCaptive Bubble Surfactometerで測定した結果,PAを加えた合成脂質の表面張力は2mN/m前後に低下するのに対し,他では10-15mN/mにとどまり,この結果から合成ペプチドを含むサーファクタントを作成する際には脂質にPAを含めることが望ましいと結論された.
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