研究概要 |
皮質脳波と聴性誘発電位の2系列の情報を入力信号に用いて,鎮静薬と鎮痛薬を独立して自動投与できる麻酔自動制御システムの開発を目的として今年度は以下の項目の研究を行った。 1.聴性誘発電位測定装置と表在脳波解析装置の統合システムの開発 本年度の科学研究費補助金により購入したパーソナルコンピュータに,RS-232シリアル入出力端子を増設し,聴性誘発電位測定装置と表在脳波解析装置の解析結果を同時に取り込めるようにした。次年度以降は取り込んだ脳波情報より鎮静度,鎮痛度を定量するアルゴリズムを付け加え,鎮静薬と鎮痛薬の至適体内濃度を実現できるよう薬物を自動投与できるシステムへと発展させる計画である。 2.フェンタニルとプロポフォールの脳波に対する相互作用の検討 麻酔深度を鎮静度,鎮痛度に分離して定量するアルゴリズムを開発するために,呼吸管理中の症例を対象にプロポフォール(0.5,1.0,1.5,2.0μg/ml)とフェンタニル(0.5,1.0,1.5μg/kg/hr)を12通りの組み合わせで投与し,聴性誘発電位の指標であるAuditory Evoked Potential Index(AEP index)と皮質脳波の指標であるBispectral Inex(BIS)に対する相互作用を検討した。AEPindexとBISの両者はRamsay鎮静度スコアや血中プロポフォール濃度と良い相関を示し,鎮静度の優れた指標であることが確認できた。フェンタニル投与速度に依存してAEPindexの値は低下したが,BISの値は変化しなかった。AEPindexとBISの同時測定により鎮静度,鎮痛度の定量が可能となることが示唆された。 3.フェンタニルのtarget controlled infusion(TCI)システムの開発 薬物動態モデルを使用して,フェンタニルの血中濃度ならびに脳内濃度を一定に調節できるTCIシステムを開発した。
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