研究概要 |
β受容体刺激による気管繊毛運動亢進における一酸化窒素(NO)の役割を検討した。ラット気管繊毛上皮細胞を培養し、位相差顕微鏡下に繊毛運動画像をビデオに記録し繊毛打周波数(Ciliary Beat Frequency, CBF)を解析した。β受容体刺激薬であるイソプロテレノールはCBFを用量依存性に増加させた。またβ受容体の細胞内セカンドメッセンジャーであるcAMPの薬理学的類似体である8-BrcAMPもまたCBFを用量依存性に増加させた。イソプロテレノールおよび8-BrcAMPによるCBF亢進はL-NMMA(NO合成酵素阻害薬)、ODQ(可溶性グアニレートシクラーゼ阻害薬)、KT5823(プロテインキナーゼG(PKG)阻害薬)により用量依存性に抑制された。イソプロテレノールおよび8-BrcAMPによるCBF亢進はKT5720(プロテインキナーゼA(PKA)阻害薬)により用量依存性に抑制された。アムリノン(フォスフォジエステラーゼタイプIII阻害薬)およびロリプラム(cAMPフォスフォジエステラーゼ(タイプIV)阻害薬)はCBFを増加させた。以上より、β受容体-cAMP-PKA系による気管繊毛上皮細胞の繊毛運動亢進にはNO-cGMP-PKG系が関与することが明らかとなった。気管繊毛運動制御にはcAMP-PKA系とcGMP-PKG系の両者が関与することが明らかとなった。 心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の気管繊毛運動への影響を検討した。ANP-A受容体のリガンドであるα-rANPはCBFを減少させた。ANP-A受容体刺激は細胞内cGMP濃度を亢進させることが知られており、この結果はcGMPが繊毛運動亢進をおこすことと矛盾する。現在、その機構の解明にむけて検討を行っている。
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