気管繊毛上皮細胞の繊毛打周波数(CBF)制御における一酸化窒素(NO)の役割をラット培養気管繊毛上皮細胞を用いて検討した。NOC-12およびGSNO (NOドナー)、L-アルギニン(NO前駆体)、8-BrcGMP (cGMPアナログ)、イソプロテレノール(β受容体刺激薬)、8-BrcAMP (cAMPアナログ)はCBFを増加させた。L-アルギニン、イソプロテレノールおよび8-BrcAMPによるCBF亢進はL-NMMA (NO合成酵素阻害薬)、ODQ (可溶性グアニレートシクラーゼ阻害薬)およびKT5823(PKG阻害薬)により抑制された。L-NMMA、ODQ、KT5823単独投与はCBFに影響しなかった。培養繊毛上皮細胞にDAF (NO感受性蛍光色素)を負荷し、NO産生を画像蛍光強度より解析した。DAF負荷後、繊毛上皮細胞に一致して蛍光が観察された。L-アルギニン投与により蛍光強度およびCBFが増加した。L-アルギニンによるこれらの増加はL-NMMAの同時投与により消失した。L-NMMAの単独投与は蛍光強度およびCBFを増加させなかった。蛍光強度増加とCBF増加の間には有意の正の相関関係が存在した。以上より、気管繊毛上皮細胞はNOを産生すること、産生されたNOはautocrine/paracrineに働くこと、NO-cGMP-PKG系は気管繊毛運動を制御していること、β受容体-cAMP-PKA系による繊毛運動亢進にはNO-cGMP-PKG系が関与することが明らかとなった。静脈麻酔薬であるプロポフォールのCBFへの影響とNOの役割を検討した。プロポフォールはCBFを用量依存性に亢進させた。プロポフォールによるCBF亢進は、L-NMMA、ODQ、KT5823により用量依存性に抑制された。以上より、プロポフォールはNO-cGMP-PKG系を介して繊毛運動を亢進させることが明らかとなった。
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