今年度は音環境について調査した。近年、重症心不全患者に補助人工心臓装置(VAS:Ventricular assist system)を装着することがある。VASは駆動装置が発する音が大きく、病室の音環境に影響を与える。VASが音環境におよぼす影響について、集中治療室と外科病棟とで比較検討した。 積分型騒音計(NL-06:リオン社製)を用いて、集中治療室および外科病棟内のベッドサイド(VAS装置近傍)で24時間連続測定を行い、昼間帯および夜間帯(23時〜5時)における等価騒音レベル(LAeq)の解析を行った。 集中治療室の夜間の等価騒音レベルは55〜60dBで、VAS装置装着患者と非装着患者とで差は認められなかった。また、装置の有無にかかわらず昼夜の差は明らかでなかった。一方、外科病棟個室の夜間の等価騒音レベルは、装置有りの場合で54dB、装置なしで44dBと前者で有意に大きかった。外科病棟の重症室においては、装置有りで53dB、装置なしで50dBであった。外科病棟では集中治療室と異なり、夜間の騒音レベルは昼間に比較し有意に小さかった。 集中治療室においては、等価騒音レベルは昼夜やVAS装置装着の有無による差は明らかでなかったが、外科病棟に比べると特に夜間の等価騒音レベルが高かった。外科病棟では、夜間の等価騒音レベルは昼間に比較し小さかった。VAS駆動装置自体は夜間の等価騒音レベルを増大させており、VAS装置装着患者および周囲の他の患者の睡眠に影響をおよぼす可能性が考えられる。
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