ベンゾジアゼピンはGABA_A受容体に結合して、GABAの作用を強めることにより、脳の高次の機能を抑制する。またほぼ100%の視交叉上核の細胞がGABAを合成しており、GABAがリズムを維持するのに重要であると考えられている。ベンゾジアゼピン系鎮静薬トリアゾラムは以前よりハムスターにて行動リズムの位相変位を起こすことが知られており、視交叉上核におけるmPer1 mRNAの発現の日内変動に影響を与えることが予想される。今回脳の神経活動を低下させるものとしてトリアゾラムを、上昇させるものとしてGABA_A受容体拮抗薬ペンチレンテトラゾール(以下PTZ)を用い、脳の神経活動と、脳の各部位におけるmPer1 mRNA発現パターン、体内時計の関係を調べた。 1 トリアゾラムがラットの行動リズムに与える影響 ラットを12時間ごとの明暗条件下で飼育した後に11時間明暗の切り替えのタイミングを後ろに遅らせてJet lag状態をつくり出し、翌日にトリアゾラム75mg/kgを腹腔内投与してその後引き続き行動リズムを観察し続けた。ハムスターではトリアゾラムは新しい明暗条件への同調を促進することが知られているが、今回ラットではコントロール群と同じく5〜6日を要した。 2 トリアゾラム、PTZのmPer1 mRNA発現に与える影響 マウスを12時間ごとの明暗条件下で飼育した後にZT(zeitgeber time)4とZT 16にトリアゾラム75mg/kg、PTZ 50mg/kg腹腔内投与し、その10分後、30分後、60分後、120分後に潅流固定して脳の凍結切片を作成し、mPer1 mRNAに相補的なRIで標識したアンチセンスプローブにてin situハイブリダイゼーションを行い、視衣叉上核や大脳におけるmRNA発現量をMCID画像システムを用いて定量した。視交叉上核におけるmRNA発現量にはコントロール群、トリアゾラム群、PTZ群で差はなかったが、大脳において、ZT4で、トリアゾラム群では低下、PTZ群では上昇がみられた。
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