研究概要 |
脳虚血における神経細胞死はネクローシスであると考えられてきた。しかし近年、脳梗塞の辺縁ではアポトーシスによる神経細胞死も発生することが観察されている。脳梗塞におけるアポトーシスは、1.ミトコンドリアの膜電位が低下2.ミトコンドリア内チトクロームcやアポトーシス誘発因子が細胞質へ遊離3.これら誘発因子によりカスペース3(蛋白分解酵素)が活性化、により核タンパク質が分解されるために発生すると考えられている。そこで昨年度は大脳皮質のNADHの蛍光を観察し、ミトコンドリア電子伝達系の停滞状態を、非侵襲的に高い空間分解能(30μm×30μm)で測定した。これにより、ミトコンドリア電子伝達系の停滞と神経細胞障害には強い相関関係があることがわかった。本年度は、ミトコンドリア電子伝達系の停滞が、アポトーシスの発現にどのような影響を及ぼすか、ラットの部分虚血モデルを用いて観察した。アポトーシスの発現を観察するため、Tunel法による染色、BCL-2,BAX, PARP, Cytochrome Cに対する免疫染色を行った。いずれの染色方法でも多少のアポトーシス陽性細胞が検出されたが、その数は少なく(10-30個程度)、部分虚血モデルでアポトーシスが虚血性神経細胞障害に重要な働きをしているとは考えにくい結果となった。また、NADH蛍光強度と、アポトーシス発現細胞の間に一定の関係を見いだすことはできなかった。
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