研究概要 |
本研究の目的は,末梢血より採取したBリンパ球を用い,骨格筋リアノジン受容体を刺激する薬剤により細胞内カルシウム濃度の変化を捉えることで,悪性高熱症患者の素因を診断できるような方法を開発することである.そのため,まず正常人の末梢血より採取したBリンパ球が骨格筋リアノジン受容体刺激薬剤により細胞内カルシウム濃度の変化が生じるかどうかについて調べる必要がある. 本科学研究費補助金により,計画書で指定した日本分光社製細胞内イオン測定装置(CAF-110)を購入した.正常ボランティアの末梢血約40mlを採取し,HISTOPAQUE^<TM>を用いリンパ球を分離し,MACS^<TM>によりCD19+細胞Bリンパ球を単離した.蛍光色素fura-2を加えインキュベーション後,上記CAF-110のセル内へ約10^7個の細胞をアプライした.骨格筋リアノジン受容体の刺激薬である4-chloro-m-cresolを加え,細胞内カルシウム濃度を測定した.正常ボランティア3人よりの試料を用い条件設定を行い,4-chloro-m-cresol添加により細胞内カルシウム濃度の上昇が捉えられた.現在,さらに至適細胞数の調整,刺激薬剤の濃度,投与間隔の調整など,最適な条件を設定するための実験を継続している.悪性高熱症素因患者からの資料による測定はまだ行えておらず,発表には至っていない. 条件設定後,さらに正常人のBリンパ球を用い正常値と考えられる値を得ることとともに,悪性高熱症素因を有していると考えられる患者より得られたBリンパ球を用い同様の測定を行う予定である.明らかな悪性高熱症患者は本邦で年間10名程度しか認められないため,それらの患者から新鮮なBリンパ球を得ることが困難となることが予想されるが,疑いのある患者に説明の上,研究への協力を依頼することが課題である. なお,本研究中の資料収集採取に関連した報告を一部発表した.
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