研究概要 |
痛覚閾値の個体差に起因する術中鎮痛状態・循環変動の個体差を検討するために,臨床研究と動物実験を行っている中途である。現在のところ以下のような経過である。 1.臨床研究 1)内視鏡的副鼻腔手術を受けた患者を術前の血圧によって高血圧群と正常血圧群と低血圧群に分け,使用した麻酔薬の時間あたりの必要量を比較検討した。痛覚閾値が低下していると考えられる高血圧患者と痛覚閾値が上昇していると考えられる低血圧患者の間には麻酔薬使用量に有意ではないが(p<0.1)差を認め,痛覚閾値によって麻酔必要量が変化している可能性が示唆された。 2)手術予定の患者でNeurometer CPT/Cを用いて3種類の周波数による電流知覚閾値を計測した。正常血圧患者に比べ高血圧患者においては特に5Hzの電流による知覚閾値差を認めた。この周波数はC線維の感受性を反映していると考えられる。 2.動物実験 1)自然高血圧(SHR)ラットと対照のWister-Kyotoラットを用いて血圧の違いによる痛覚閾値変化を放射熱法とフィラメント法で計測し,高血圧ラットの方が痛覚閾値が上昇していることを確認した。その後足底筋剥離手術を行い,痛覚過敏の形成を計測した。 本年度の準備で本研究は概ね軌道に乗りつつあり,次年度に痛覚閾値の個体差による手術中の血行動態変化の関連を明らかにする予定である。
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