研究概要 |
正常ラット(250-300g)を用いた.1,1'-dioctadecyl-6,6'-di(4-sulfophenyl)-3,3,3',3'-tetramethylindocarbocyanine(DiI)をdimetylsulfoxideに溶解し(0.2%),10μlを右側脳室に注入した.経時的に脳を摘出し,パラフィン包埋切片を作製したのち,蛍光顕微鏡による観察をおこなった.DiI注入後6時間において,両側側脳室の上衣細胞は蛍光染色されていたが,他の領域に明らかな蛍光を発する細胞は存在しなかった.DiI注入24時間後には,蛍光を発するこれらの細胞は脳室壁をこえて,脳室下領域にまで移動していた.また,第4脳室から脊髄中心管の内壁にもDiIにマークされる細胞が存在した.DiI注入後3日,7日目にも蛍光する細胞は残存し,しかもより広範囲に移動していた.しかし,海馬や線条体にはそれらはみとめられなかった.脳室内に投与された蛍光細胞マーカー,DiIは脳室上衣細胞をトレースすることが可能で,上衣細胞がmigrateすることは他の研究者の結果と一致した.したがって虚血脳における上衣細胞の動態追跡に応用できる.しかも今回は,凍結切片でなく,パラフィン包埋切片においても蛍光が退色することなく観察可能なことが判明したので,組織構造をより良く温存しながらの神経細胞トレースが容易になった.
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