研究概要 |
成体ラット(250-300g)を用いた.1,1'-dioctadecyl-6,6'-di(4-sulfophenyl)-3,3,3',3'-tetramethylindocarbocyanine (DiI)をdimetylsulfoxideに溶解し(0.2%),10μ1を左側脳室に注入した.その30分後から右中大脳動脈閉塞(MCAO)を90分間行った後に再灌流を開始した.対照群ではDiI注入後にSham手術を施行した.脳摘出の48時間前から12時間毎に4回bromodeoxyuridine (BrdU)を50mg/kgずつ腹腔内投与し,MCAO後7,14,28日後に脳を摘出した.また,MCAO開始時から3日間,basic fibroblast growth factor (bFGF)を1μg/dayで右側脳室内に持続投与し,MCAOの7日後に脳を摘出した.厚さ5μmの凍結切片を作成し,BrdU, βIII-tubulin, glial fibrillary acidic protein (GFAP),04,Notch-1の各抗体で蛍光免疫染色を行い,右半球を観察した.Shem群では右側脳室のeppendymal layer (EL)とrostral migratory stream (RMS)にDiI陽性の細胞が限局していたが,MCAO群ではさらにELからsubventricular zone (SVZ)を経て線条体方向へ移動するDiI陽性細胞も認めた.これらの細胞はβIII-tubulin, GFAP,04抗体に陰性であったが,一部はBrdUまたはNotch-1抗体に陽性であった.また,BrdU陽性細胞はsham群ではSVZからRMSへのストリームを形成していたが,MCAO群ではそれに加えて線条体の梗寒領域全体にBrdU陽性細胞が分布していた.梗寒領域のBrdU陽性細胞のほとんどがDiI陰性であった.Eppendymal cellsは一過性のMCAOによる脳障害に反応して増殖し,SVZから梗寒巣に向かって移動する未分化な細胞の起源であることが示唆された.なお,FGF-2は,今回用いた用量と投与法では,これらの変化に明らかな影響を与えなかった.
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