研究課題/領域番号 |
12671481
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研究機関 | 大分医科大学 |
研究代表者 |
野口 隆之 大分医科大学, 医学部, 教授 (90156183)
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研究分担者 |
森 正和 大分医科大学, 医学部, 講師 (20220022)
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キーワード | 急性肺損傷 / ICAM-1(intercellular adhesion molecule-1) / 軽度低体温 / 高炭酸アシドーシス |
研究概要 |
接着分子の一つであるICAM-1(intercellular adhesion molecule-1)は急性肺損傷において、遊走好中球と血管内皮細胞を強固に接着させるという点で特に重要な役割を果たすと考えられている。本研究ではラットの誤嚥性肺炎モデルに脳損傷の急性期治療に行われている軽度低体温管理を導入し、炎症の初期段階としての好中球浸潤の程度とICAM-1発現への影響を検討した。 雄性SDラットを麻酔下に、気管切開し、HClを投与した。その後、純酸素でベンチレーターによる人工呼吸管理を行った。HClの気管内注入の有無と体温により以下の4群を設定した。(1)常温群(38±0.3℃以下N群)、(2)軽度低体温群(33±0.3℃以下H群)、(3)HCl+常温群(AN群)、(4)HCl+軽度低体温群(AH群)。全群、6時間管理を行い、犠死させた後、両肺を摘出した。実験中は血液ガスの測定を経時的に行った。右肺下葉は凍結薄切切片を作製し、HE染色とICAM-1の免疫染色を行った。右肺の残りの葉はwestern plot法を用いてICAM-1蛋白の解析を行った。左肺の一部はRT-PCR法によるICAM-1mRNAの解析を、左肺の残りは好中球集属集簇の指標としてMPO活性を測定した。 血液ガスにおいて、AN群はHCl注入後低下状態が持続したが、AH群は注入直後一時的に悪化したものの、6時間目には著明に改善した。MPO活性はAN群に比較し、有意にAH群で抑制されており、組織像においても好中球集簇の抑制が確認された。ICAM-1は蛋白とmRNAの両方においてAH群で発現が抑制されており、免疫染色においても血管内皮細胞に対する発現の抑制が認められた。 この結果により軽度低体温を適切に臨床応用すればARDS等の急性肺損傷の程度を軽減できる可能性が示された。
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