研究概要 |
新しく開発された局所麻酔薬であるレボブピバカインの神経毒性を,既存の局所麻酔薬と比較検討しそれらの安全性を検証すること,さらに,ブピバカインの光学異性体間の神経毒性を比較し,光学性と神経障害に関連性があるかどうかを明らかにすることを目的とした。 まず,代表的な局所麻酔薬であるリドカインとレボブピバカインの神経毒性を機能的・組織学的障害の面から比較した。 セボフルラン麻酔下に,ラットのくも膜下腔に32-gaugeポリウレタンカテーテルを後頭骨・第1頸椎間膜から尾側に約11cm挿入した。24時間後に,1%レボブピバカインまたは2%リドカインを,マイクロシリンジポンプを用いて1μl/minの速度で2時間持続投与した。薬物投与4日後にtail-flick試験を行い,% maximal possibble effect(%MPE)で感覚機能障害の程度を評価した。さらに致死量のペントバルビタールを腹腔内投与し,パラフォルムアルデヒドで灌流固定したのち脊髄を取り出し,脊髄円錐から1cm尾側に離れた部分の馬尾神経を包埋し,1μmの厚さで組織を切り出し,光学顕微鏡を用いて組織学的変化を観察した。 レボブピパカインをくも膜下腔投与後,すべてのラットで可逆的な麻痺を認めたが,4日後に機能障害を残したものはいなかった。リドカインに比べ有意に%MPEが低かった。病理組織学的異常もリドカインに比べ程度が軽かった。レポブピバカインはリドカインに比べ,神経毒性が低いことが分かった。 同様の方法で,1%ブピバカインのラセミ体,S(-)体(レボブピバカイン),R(+)体の比較を行った。%MPEは3者間に差はなかったが,組織学的障害はR(+)体が有意に小さかった。
|