定常流ポンプは、人工心肺から経皮的心肺補助(PCPS)、左心補助、さらに両心補助までと広く応用可能な循環補助装置である。一酸化窒素(NO)吸入療法は、肺血管に対して拡張作用により右心負荷を軽減し、血液ガスを改善し、補助循環中のNO吸入療法の併用は有用性が示されているが、NOは非常に不安定なガスのため危険性が高く、NOの簡便で安全な投与法が望まれる。 本研究では、NOガスを簡便に投与するためのシステム作製と、補助循環中のNO吸入の効果、および定常流ポンプのモータ消費電流解析による応用の可能性の検討を行った。 1.NOの使用を簡便にするシステム NO余剰ガスを無害化するシステムを試作した。排気および室内中の亜硝酸ガス濃度が基準値以下で、本装置の安全性、有効性が示された。今後、耐久性については検討が必要である。 2.NO吸入の右心補助の軽減効果 幼ブタ虚血性心不全モデルに、定常流両心補助を行った。循環補助下、NO吸入群は、非吸入群に比して有意に右心補助率を軽減させ、また、定常流両心補助における重篤な合併症である肺うっ血、肺浮腫を軽減させた。 3.定常流ポンプでの心臓機能推定への可能性 模擬回路による左心室-大動脈定常流バイパスモデルを作製し、左心室に模した拍動流ポンプの駆動状態を定常流ポンプのモータ消費電流から推定する検討を行った。ポンプ補助率に対する電流振幅の変化が心機能の違いにより異なることから、電流振幅変化の解析による心機能評価の可能性が示唆された。 4.PCPSシステムの自動運転の可能性 PCPSの運転上問題となる吸い付きをモータ電流から検知し自動で回転数を調節するプログラムを作製し、成犬に右心房-大腿動脈バイパスを行い、本プログラムを作動させた。本プログラムは、流量波形により確認できた吸い付きを92.5%検知し、5秒以内に回避した。今後プログラムの精度を高め実用化をめざす。
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