研究概要 |
マグネシウムは生体内で4番目に多い陽イオンであり、近年in vitroの研究でNMDA受容体の活性化を阻害することが明らかにされ、臨床的にもマグネシウムは麻薬の鎮痛効果を増強することが示されている。本研究の目的は、ラットのホルマリンによる炎症性疼痛モデルを用いて、血清マグネシウムイオン濃度と鎮痛効果の関連を明らかにすることである。 SD系雄ラットに硫酸マグネシウムを1〜5mmol/kg腹腔内投与し、血清マグネシウム濃度の経時的変化を測定した(n=6)。各投与量1,2,3,5mmol/kgでの血中濃度は前値0.61±0.06mmol/Lから、1時間後それぞれ0.72±0.14,0.81±0.28,1.12±0.29,1.43±0.33mmol/Lに上昇した。 SD系雄ラットの後肢に5%ホルマリン50μlを皮下注する疼痛モデルにおいては、疼痛行動の出現回数は2相性の変化を示す。今回の研究では、疼痛行動の回数はホルマリン注入後3分および22分後に最高値を示し、それぞれ、1分当たり7±7回および9±12回であった(n=6)。また、ホルマリン皮下注1時間前にマグネシウム5mmol/kgを腹腔内投与した場合、第1相の疼痛行動は変化しなかったが、第2相の行動は前処置しない場合に比べ33±26%(5〜67%)減少した。 以上の結果、マグネシウムがホルマリンによる炎症性疼痛を抑制することが明らかとなった。しかし、今回の研究ではマグネシウム投与による疼痛抑制の程度に個体差が大きかった。これは、マグネシウム投与後の血中濃度の個体差が大きかったことに関係があると考えられ、今後、マグネシウムの投与法を腹腔内から経尾静脈に変更し、マグネシウムの投与量と血中濃度および鎮痛効果の関連を再検討する予定である。
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