低酸素負荷および一酸化炭素暴露時の脳内神経伝達物質放出に及ぼす影響をマイクロダイアリーシス法により行った。また、神経細胞障害の程度を組織学的に検討した。 前頭皮質に透析カニューレを挿入したwistarラントをプラスチック箱に入れ、95%窒素・5%酸素混合ガス(低酸素負荷)あるいは2000ppmの一酸化炭素を含有した空気(CO負荷)を吸入させた。透析液の回収は15分毎とし、酵素カラムを用いた高速液体クロマトグフフィーにてアセチルコリンおよび各種アミノ酸を測定した。アセチルコリンは、低酸素負荷により30分後で前値に比べ増加傾向を示したが有意ではなかった。CO負荷では、吸入中は前値に比べ有意に高値を示し、吸入後150分以降に再度有意に高値となり、低酸素負荷に比べ大きな変化を示した。グルタミン酸は、低酸素負荷後30分から負荷終了15分まで高値を示すが有意ではなくその後低下した。CO負荷では吸入45分後から上昇し吸入後も高い傾向を維持した。両者の変動には有意差がみられた。グルタミン、アスパラギン、アルギニン、グリシン、アラニン、スレオニンは低酸素負荷では一過性の小さな変動にとどまり、CO負荷では吸入45分後より大きく変動し、これらの変動間には有意差がみられた。GABAは両群とも吸入30分後にピークとなり以後同様に低下した。タウリンは両群とも吸入中低下傾向を示し、この変動には有意差があり低酸素負荷で低下傾向が大きかった。組織学的検討では、海馬CA3、CA4領域で神経細胞の変性が認められたが、海馬CA1領域、大脳皮質では変化がなく、両群に差はみられなかった。C-Fos免疫組織染色では海馬、大脳皮質ともC-Fos陽性細胞は認められなかった。 以上より一酸化炭素暴露は低酸素負荷に比べ脳内神経伝達物質放出に与える影響が大きく、低酸素より一酸化炭素による神経細胞障害の方がより大きいことが示唆された。
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