研究概要 |
1.長時間作用性局所麻酔薬プピバカイン中毒時の循環抑制に対するホスホジエステラーゼ阻害薬の効果 セボフルラン麻酔下成犬においてブピバカインによる循環抑制時のアムリノン(AM),ミルリノン(ML),オルプリノン(OL)の効果を比較した.方法:心拍数(HR),平均動脈圧(MAP),中心静脈圧(CVP),左室内圧一次微分の正の最大値(dP/dtmax),左室等容拡張期の左室内圧変化の時定数T,左室拡張終期圧(LVEDP),心係数(CI),左室分時仕事係数(LVMWI),体血管抵抗係数(SVRI)を比較した.AM2mg/kg, ML0.2mg/kg, OL0.12mg/kg,生食0.5ml/kgを一回投与した.結果:AM, ML, OLはMAPを上昇させた.MLはHRを増加させたが,OLは心拍数を増加させなかった.AM, ML, OLはdP/dtmaxとCIを増加させ,SVRIおよびLVEDPを低下させた.AM, ML, OLはTを改善し,LVMWIは増加させた.結論:ブピバカイン中毒時の循環抑制に対し,AM, ML, OLは循環補正効果を有する.これらのホスホジエステラーゼ阻害薬は長時間作用性の局所麻酔薬中毒時の循環蘇生薬として有用である. 2.長時間作用性局所麻酔薬ロピバカイン中毒時の循環抑制に対するコルホシンダロパートとエピネフリ効果 セボフルラン麻酔下成犬においてロピバカイン中毒時のコルホシンダロパート(CR)とエピネフリン(EP)の蘇生効果を比較した.方法:HR, MAP, CVP, dP/dtmax, CO, SV, SVRを比較した.CRは初回量50μg/kg, 1μg/kg/minで持続注入,EPは初回量10μg/kg, 0.1μg/kg/minで持続注入した.試験薬投与後から,直接心臓マッサージを行い,MAPが40mmHgを維持できる時点で心臓マッサージを中止した.結果:心臓マッサージの合計時間はCRが短かった.MAPは30分後でエピネフリン群が高かった.HRは蘇生開始後10分までCRが多かったが,30分に有意差はなかった.dP/dtmaxとCOはCRが大きかった.CVPは30分後に有意差はなかった.SVRはCRが小さかった.SVはCRが大きかった.結論:蘇生成功率はCRとEPに有意差はなかった.しかし,蘇生に要した心臓マッサージの時間がCRにおいて著明に短かった.CRは蘇生中のdP/dtmaxが大きく,SVRが小さく,COは有意に大きかった.一方,還流圧の維持の観点からはEPが有意である.
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