体性交感神経反射を指標として抗コリンエステラーゼ薬である臭化ネオスチグミン(neostigmine bromide : NB)の静脈内投与により抗侵害刺激作用が発揮されるか否かをについて検討した。 (方法) 実験には2.5〜3.0kgの成ネコを使用した。静脈路を前肢に確保しケタミン、ウレタン、α-クロラロース、ベクロニウムで全身麻酔し、空気吸入下に人工換気した。 最初に血圧の変動に伴う交感神経活動への影響をできるだけ少なくし、かつ副交感神経の影響を少なくする目的で、頚部において両側迷走交感神経幹を切断した。その後、仰臥位で片側大腿神経を周囲組織より剥離し、その中枢側切断端を銀線双極電極上に置き刺激用とした。さらに経腹的に腰部交感神経幹を露出し、第4、第5神経節間で切断しその中枢側切断端を銀線双極電極上に置き活動電位導出用とした。全身麻酔下の成ネコの片側大腿神経に最大上刺激を与え、腰部交感神経幹の中枢側切断端から活動電位を導出した。 NBの静脈内投与は20μg/kg、100μg/kg、200μg/kgの3群に分類した。各種パラメータに変化が認められた場合には拮抗薬としてアトロピンを同じ投与経路で投与することとした。 (結果) A反射電位、C反射電位の振幅、潜時に有意な変化は認められなかった。また、NBの捕縄脈内投与による有意な循環動態の変化も認められなかった。 (結論) NBの静脈内投与では抗侵害刺激作用が得られないことが示唆された。
|