体性交感神経反射を指標として抗コリンエステラーゼ薬である臭化ネオスチグミン(neostigmine bromide : NB)をクモ膜下腔、静脈内投与に投与した時の抗侵害刺激作用、循環系に対する影響を体性交感神経反射を指標として検討した。 (方法) 全身麻酔下の成ネコの片側大腿神経に最大上刺激を与え、腰部交感神経幹の中枢側切断端から活動電位を導出した。NBのくも膜下投与は、atranto-occipital membraneよりクモ膜下腔尾側に向け約25cm挿入したカテーテルより、静脈内投与は麻酔導入前に前肢に確保した静脈路より行った。くも膜下投与は10μg、50μg、250μg、2mgの4群に、静脈内投与は20μg/kg、100μg/kg、200μg/kgの3群に分類した。各種パラメータに変化が認められた場合には拮抗薬としてアトロピンをNBと同じ経路から投与した。 (結果) 1.NBのくも膜下投与 (1)C反射電位が用量依存性に抑制されたことから、NBのくも膜下投与により抗侵害刺激作用の発現する可能性が客観的、定量的に示唆された。 (2)抗侵害刺激作用の発現機序はC反射電位の抑制が、アトロピンのくも膜下投与により完全に拮抗されなかったということからムスカリン受容体以外の機序の存在も示唆された。 (3)潜時が延長する機序は今回の研究では明確にできないが、C線維の伝導そのものが抑制されるためと考えられる。 (4)NBのくも膜下投与に伴い血圧低下、心拍数の低下などの循環動態の抑制が起こりうる。 2.NBの静脈内投与 C反射電位の振幅に有意な変化が認められなかったことから、NBの静脈内投与では抗侵害刺激作用が得られないことが示唆された。 (結論) NBのくも膜下投与は抗侵害刺激作用を発揮するが、静脈内投与では抗侵害刺激作用は得られない。
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