研究概要 |
重症疾患ではさまざまなケミカルメディエーターの放出があるが、それらによる延髄呼吸中枢への影響は解明されていない。そこで重症疾患で放出される各種ケミカルメディエーターによる呼吸性ニューロンの解析を行い呼吸ネットワークの障害を調べた。 ラット脳幹脊髄摘出標本モデルを用い、標本は潅流槽におき、95%O_2,5%CO_2で飽和した人工脳脊髄液で潅流。呼吸性活動の出力モニターとして、C4前根から吸息性活動を吸引電極を用い記録。呼吸性ニューロンは直径2-3mのthin-wall borosilicareガラス管を用い"blind"パッチクランプ法によるホールセル・レコーディングにより膜電位解析を行った。 内因性オピオイドによる呼吸抑制は重要な問題である。オピオイドによる中枢性呼吸抑制は吸息性ニューロンのバースト形成を抑制するが、静止電位は過分極する場合としない場合がある。呼息性ニューロンと前吸息性ニューロンは影響を受けない。その作用はミューおよびカッパ・レセプター刺激薬で現れ、デルタ・レセプター刺激薬では現れなかった。ニューロンの抑制機序は前シナプス抑制および後シナプス抑制の両方から起こっていることが解った。治療で用いられる抗炎症剤サリチル酸は低濃度では呼吸促進を起こすが高濃度では呼吸抑制を起こした。この吸息性ニューロンに対する作用はすべて前シナプス性に生じたものであった。各種ケミカルメディエーターの中でも、最初に放出されるTNF-alphaを潅流液中に投与し、呼吸性ニューロンはTNF-alphaにより中枢性に抑制された。このとき膜抵抗は減少し静止電位は過分極した。これより推察されることはTNF-alphaは直接、延髄呼吸性ニューロンに対し抑制作用を持つことが考えられた。
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