研究概要 |
急性帯状疱疹痛から帯状疱疹後神経痛へ推移する時期は明確にされていない.急性帯状疱疹痛を少量の局所麻酔薬を用いた神経ブロックで治療していると,一旦軽減した急性帯状疱疹痛が再燃する現象が起こることがある.少量の局所麻酔薬を使用した神経ブロックでは,知覚神経ブロックよりも交感神経ブロックによる疼痛軽減機序が推測される.したがって激しい急性帯状疱疹痛で持続硬膜外ブロックによる入院加療を行った症例で,治療中の疼痛の再燃をきたした症例を検討した.入院患者223例について検討した.神経ブロックは持続硬膜外ブロックを0.5%のブピバカイン0.3-1.0ml/時間で行った.痛みのアナログ目盛りで一旦2以下に低下した疼痛が4以上に増強した症例を,疼痛の再燃があった症例とした.223例中の29例に疼痛の再燃が見られた.疼痛の再燃がなかった症例と疼痛の再燃があった症例の年齢に有意の違いはなかった.疼痛の再燃が見られた29例で,帯状疱疹の皮疹が軽症例であった34例中に1例もなく,中等症例であった93例中の5例,重症例であった96例の24例であった.疼痛の再燃がみられた症例は加齢とともに有意に増加はしていなかった.疼痛の再燃は中等症例では皮疹発症5日から16日に起こっており,重症例では皮疹発症5日未満から24日までに見られていた.疼痛の増強が起こっていた皮疹発症後の平均日数は15日であり,中等症例と重症例で有意の違いは見られなかった.したがって,中等症例,重症例の一部の症例では,皮疹発症早期に急性帯状疱疹痛は交感神経依存性疼痛から交感神経非依存性疼痛に変化することが推測された.帯状疱疹後神経痛への移行を防止するためには,皮疹発症早期からの対策が重要であることが推測された.
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