確立した帯状疱疹後神経痛を軽減することは困難であるので、急性帯状疱疹痛から帯状疱疹後神経痛へ移行する治療法が重要であるといわれている。帯状疱疹の発症早期から三環系抗うつ薬のアミトリプチリンを服用することにより急性帯状疱疹痛から帯状疱疹後神経病への移行を防止できる可能性が考えられている。急性帯状疱疹痛の発症7日以内から持続的な交感神経ブロックにより治療した症例で、アミトリプチリンを発症早期から服用した19例とアミトリプチリンを服用しなかった15症例の比較を行った。アミトリプチリンの服用以外は両群ともに同様な治療を行った。持続的な交感神経ブロックは帯状疱疹を発症した脊髄レベルをブロックできるように持続硬膜外カテーテルを留置し、1%メビバカインを0.5-1.0ml/時で投与した。アシクロビル4g/日またはバラシクロビル3g/日を7日間服用し、リン酸コデインとアセトアミノフェンを治療開始より服用した。アミトリプチリンは10mgより開始し、疼痛が軽減しない症例では疼痛軽減が得られるか副作用で服用が困難になる量まで漸増した。年齢(±標準偏差)はアミトリプチリン服用群で56.7±19.5歳、アミトリプチリン非服用群が36.7±27.7歳であり、アミトリプチリン非服用群が若年であった。帯状疱疹を発症してから神経ブロックを中止するまでの期間を有痛期間として比較した。皮疹が中等症例でのアミトリプチリン服用群の平均有痛期間は20.0日であり、アミトリプチリン非服用群で18.2日、皮疹が重症例でのアミトリプチリン服用群の平均有痛期間は25.1日であり、アミトリプチリン非服用群では22.9日であった。両群に有意の違いはなく、今回検討した症例ではアミトリプチリンの早期からの服用で急性帯状疱疹痛の有痛期間を短縮してはいなかった。
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