研究概要 |
急性帯状疱疹痛を少量の局所麻酔薬を用いた硬膜外ブロックで治療していると,一旦軽減した急性帯状疱疹痛が再燃することがある.急性帯状疱疹痛で入院加療を行った223例では29例に疼痛が再燃していた.疼痛再燃の有無と年齢に有意の違いはなかった.疼痛の再燃は軽症例ではなく,中等症の93例中の5例,重症の96例中の24例にみられた。疼痛の再燃は皮疹発症後の平均15日であり,中等症例と重症例で有意の違いはなかった.疼痛の再燃がみられた症例の急性帯状疱疹痛の有痛期間は有意に長くなっていた。帯状疱疹後神経痛の予防として三環系抗うつ薬のアミトリプチリンが有効であることが考えられている。急性帯状疱疹痛の発症7日以内から持続的硬膜外ブロックを行い、アミトリプチリンを発症早期から服用した19例とアミトリプチリンを服用しなかった15症例を比較した。アミトリプチリンの服用以外は両群ともに持続硬膜外ブロック行い、アシクロビル4g/日またはバラシクロビル3g/日を7日間服用し、リン酸コデインとアセトアミノフェンを服用した。アミトリプチリンは10mgより開始し、疼痛が軽減しない症例では疼痛軽減が得られるか副作用で服用が困難になる量まで漸増した。年齢(±標準偏差)はアミトリプチリン服用群で56.7±19.5歳、アミトリプチリン非服用群が36.7±27.7歳であり、アミトリプチリン非服用群が若年であった。帯状疱疹を発症してから神経ブロックを中止するまでの期間を有痛期間として比較すると、中等症例での平均有痛期間はアミトリプチリン服用群で20.0日、アミトリプチリン非服用群で18.2日、重症例での平均有痛期間はアミトリプチリン服用群で25.1日で、アミトリプチリン非服用群で22.9日であった。両群に有意の違いはなく、今回検討した症例ではアミトリプチリンの早期服用により急性帯状疱疹痛の有痛期間は短縮しなかった。
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