研究概要 |
疼痛機序にサブスタンス-P(NK1)レセプターなどのタキキニンレセプターが関与していることは以前から知られていたが、麻酔薬がどのようにタキキニンレセプターに関与しているのか興味が持たれているのもかかわらず、いまだにその作用機序は解明されていない。 今回の研究においては麻酔薬のタキキニンレセプター受容体に与える影響を詳しく解析するために、アフリカツメガエル卵母細胞発現系を用いて、(1)吸入麻酔薬(ハロセン、イソフルラン、エンフルラン、セボフルラン)がサブスタンス-P(NK1)受容体にいかに作用するかを検討した結果、麻酔薬はサブスタンス-P(NK1)レセプター受容体機能を吸入麻酔薬(ハロセン、イソフルラン、エンフルラン、ジエチルエーテル)が抑制するという結果を得た(2000年度日本麻酔学会総会において発表)。(2)さらに、現在まで、麻酔薬は燐酸化酵素を介してGq蛋白結合受容体を抑制していることが明らかとなっているので、麻酔薬のタキキニンレセプター受容体に対する抑制効果が燐酸化酵素と関係があるかどうか解析した結果、Protein Kinase C阻害薬によってこれらの麻酔薬の抑制効果が消失したことにより、Protein Kinase Cが麻酔薬の抑制効果に関与していることが明らかとなった。今後は、さらにサブスタンス-P、ニューロキニンA受容体のProtein Kinase C,Protein Kinase A,Protein Kinase Gの燐酸化部位であるセリン、スレオニンやMAP Kinaseの燐酸化部位などを他のアミノ酸に変えて、吸入麻酔薬(ハロセン、イソフルラン、エンフルラン、セボフルラン)がこのMUTANT受容体にいかに作用するかを検討する予定である。
|