研究概要 |
疼痛機序にサプスタンスーP(NK1)レセプターなどのタキキニンレセプターが関与していることは以前から知られていたが、最近になってこれらの遺伝子欠損マウスを用いた実験によってタキキニンレセプターと疼痛との関係がより明らかになってきた。タキキニンレセプターを介した疼痛メカニズムに対して麻酔薬がどのように関与しているのか興味が持たれているが、いまだにその作用機序は解明されていない。一方、最近麻酔作用にメタボトロピックグルタミン酸受容体や5HT受容体、ムスカリン受容体などのGq蛋白結合受容体が関係していることが明らかになり(Minami et al.、1997,1997,1998),同じGq蛋白結合受容体であるタキキニンレセプターも麻酔薬が何らかの影響を与えているのではないかと予想されるが、詳しい検討は今だになされていない。 一方、アフリカツメガエル卵母細胞発現系は中枢神経系のGq蛋白結合受容体に対する薬剤の作用を検討する実験系として広く使用されている。昨年度の研究においては麻酔薬のタキキニンレセプターに与える影響を詳しく解析するために、アフリカツメガエル卵母細胞発現系を用いて、(1)吸入麻酔薬(ハロセン、イソフルラン、エンフルラン)がサブスタンスーP(NK1)受容体を抑制する事を明らかにした。(Minami K, et al., Anesth Analg In press)(2)現在まで麻酔薬は燐酸化酵素を介してGq蛋白結合受容体を抑制していることが明らかとなっているので、麻酔薬のタキキニンレセプター受容体に対する抑制効果が細胞内燐酸化酵素Protein Kinase Cと関係があるかどうか解析した結果PKC阻害薬であるGF109203Xにより吸入麻酔薬のSubPに対する抑制作用は消失した。これらの結果から吸入麻酔薬はタキキニンレセプターに対して細胞内リン酸化酵素(PKC)を介して抑制していることが明らかとなった。
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