研究概要 |
蓄尿時に不随意な排尿筋収縮を生じる不安定膀胱の発症機序に,ムスカリン受容体やP2受容体の発現変化が関与しているか否かを検討している. まず,ラットを用いて部分的尿道閉塞による二次性不安定膀胱モデルを確立した.等容量性律動性膀胱収縮時の最大膀胱収縮圧は,閉塞群では対照群の約150%に増加した.Atropine投与によるムスカリン受容体遮断は,最大膀胱収縮圧を対照群では投与前の約60%に,閉塞群では約50%に抑制した.Atropine投与下にP2X1受容体の選択的拮抗薬であるPPADSを投与したところ,最大膀胱収縮圧は対照群ではほとんど変化しなかったが,閉塞群ではatropine投与前の約20%にまで抑制された.このことから,閉塞膀胱における二次性不安定膀胱では,P2X1受容体を介するATP性収縮が亢進していると考えられる. そこで,P2X1受容体の発現増強をmRNAレベルでCompetitive PCRを用いた検討に供するために,対照群と閉塞処置をしたラットの膀胱を摘出し凍結した. 従来,totalな膀胱機能の検討のためにin vivo whole animalを用いた実験が重要と考えてきた.この際,より生理的条件すなわち排尿時において膀胱収縮力を評価するためには,最大膀胱収縮圧は適切とはいえない.膀胱収縮圧は膀胱容量や排尿率に影響されるからである.そこで,より正確にin vivoでの排尿筋収縮特性を評価するために,pressure-flow studyを応用して排尿筋の収縮の仕事率(watt factor)を導くシステムを確立した.現在これを用いて排尿筋の収縮力に及ぼすP2X1受容体の寄与度を検討中である.
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