1.下部尿路臓器(膀胱、前立腺、外尿道括約筋)に対する急性の侵害刺激の後、脊髄内に発現するproto-oncogene由来蛋白c-Fosは、3臓器においてその発現部位がほぼ同様であった。またこれらへの急性侵害刺激後のplasma extravasationも、その発現皮膚領域は同様であった。したがって侵害刺激下においては、これらからの求心性経路には共通性があることが推察された。 2.膀胱に対する慢性的侵害刺激により、脊髄内ではsubstance Pおよび、NK1受容体の染色性の増強が認められた。Substance Pは、主として一次求心性線維由来であり、NK1受容体は脊髄内の受容ニューロンに存在するため、慢性的な侵害刺激が脊髄内のsubstanceP-NK1受容体系の機能昂進をもたらす可能性が示唆された。 3.前立腺に対する急性侵害刺激により、脊髄内でのsubstance Pの染色性が増強した。このことは前立腺においても侵害刺激の伝達物質としてsubstance Pが役割を担っていることを示すものと考えた。更にこの染色性の増強は、交感神経α遮断薬により、その程度が減弱した。この現象は前立腺の炎症においては、交感神経系が一定の役割を果たしていることを示している。 4.下部尿路に対する侵害刺激により発現するc-Fosは、同時に第一仙骨孔からの電気刺激を加えることにより、その発現が電気刺激単独と変化のない数となることが判明した。このことは電気刺激により、下部尿路からの侵害性入力がマスクされてしまうことを示し、電気刺激が下部尿路症候に有用である理由の説明となり得るものと考えられた。
|