研究概要 |
多種類の抗癌剤耐性遺伝子発現の検討に使用できるDNAマイクロアレイを作製するために,GeneBankで対象となる関連遺伝子を検索し,その遺伝子に特異的なエクソンを増幅できるPCR用のプライマーを作製した。このプライマーはロシュ社のLightcyclerにも使えるように設計されたもので,同時にDNAハイブリダイゼーション・プローブ法に必要な1組の色素標識プローブも作製し、至適条件を決定した。 尿路性器癌患者から同意を得て,手術時にえられた臨床材料を用いて,MTTassay法による抗癌剤感受性試験を実施した。残りの材料からmRNAの抽出,cDNAの合成をおこなった。平成13年末までに41例に抗癌剤感受性試験を実施した。一方,cDNAの合成のみを行ったのは590例である。 臨床材料での抗癌剤耐性遺伝子の発現を検討する前に、尿路性器癌細胞株を用いて、各種抗癌剤多剤耐性遺伝子の発現および抗癌剤感受性試験を検討した。各耐性遺伝子の発現量が最も多い癌細胞株の発現量を基準値として、以後の実験を実施した。 Lightcyclerによる定量的RT-PCRでは、抽出されたmRNA量は検体により異なるので,ハウスキーピング遺伝子(PBGD)の定量的RT-PCRを同時に行い、測定された抗癌剤耐性遺伝子のmRNA量をPBGDの発現量で除して,この値をその検体の発現量と規定した。抗癌剤感受性試験の成績は、抗癌剤の濃度と細胞増殖の抑制率から、高度耐性、中等度耐性、軽度耐性、耐性無しの4つに判定した。 この抗癌剤耐性遺伝子の発現量と抗癌剤感受性試験結果とを比較検討したが、今回の検討では、培養細胞株でもまた臨床献体においても、どの抗癌剤の耐性化とも有意に相関する1つの耐性遺伝子は確認できず、抗癌剤の耐性化には複数の遺伝子(転写因子を含む)の関与が示唆された。
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