研究概要 |
われわれは、本課題の基礎実験としてラット膀胱をもちい膀胱壁内神経の発達と神経栄養因子の発現について調べた。胎生16日より神経が膀胱壁内に進入してくることが判明し、生後1週までに膀胱壁内の神経の分布はほぼ完成することが分かった(Wakabayashi Y et al. Anat Embryol 205(2002)255-261)。ラット胎児膀胱をもちい神経成長因子(nerve growth factor, NGF)ファミリーの4つの因子さらにGDNFファミリーの4つの因子とこれらのレセプターに特異的なプライマーをもちいた半定量的RT-PCR法によりこれら因子のm-RNAの発現量を調べ、これらの因子が膀胱の神経発達や膀胱壁内神経の維持に関与していることが示唆された(Kawakami T et al. Neurosci Lett 329(2002)77-80;Neurourol Urodyn, in press)。さらに、われわれが開発したラットを用いた膀胱壁内神経再生モデルでは、片側の骨盤神経節から膀胱に入る神経束を挫滅すると患側の膀胱壁内の神経は早期に変性を起こすが、術後14日頃より神経の再生がみられる。このモデルを作成し、経時的(術後1,2,3,7および21日)に膀胱を摘出し健側と患側にわけて-70度で保存している。コントロールとして片側の骨盤神経節を露出したラット膀胱をもちいる。これらの標本よりtotal RNAを抽出しNGFファミリーの4つの因子に特異的なプライマーをもちいた半定量的RT-PCR法によりこれら因子のm-RNAの発現量を検討した。これら4つの因子のmRNAの発現のピークは術後21日であった。したがって術後、より早期にこれらの因子を膀胱内に投与できれば神経再生が早く起こることが示唆された
|