勃起障害に対する経口治療薬としてシルデナフィルがあるが、心血管系障害患者に対する投与は伴い、特に硝酸剤、NO供与剤投与中の患者には禁忌である。今回、心血管系障害の一つである高血圧患者における陰茎血管系の構造変化に伴う勃起機能に対する影響について検討する目的で検討を行った。陰茎勃起には陰茎への血流の増加がもっとも重要な役割を果たしている。高血圧に伴い全身の小血管において内腔の狭小化・壁の肥厚といった構造的変化が生じ、血管抵抗が増加することは知られているが、この高血圧性変化が陰茎血管においても認められるかどうかを明らかにするため、高血圧モデルラットと正常ラットを用い、陰茎血管と後肢血管において種々の血管作用薬に対する反応性を比較した。実験系はラット内陰部動脈系の血管平滑筋ならびに陰茎海綿体の反応を観察しうるラット内陰部動脈系潅流モデル実験系を用い、陰茎海綿体血管抵抗、陰茎海綿体内圧測定を行った。また、後肢血管における実験は陰茎血管とほぼ同じであるが、カテーテルを右総腸骨動脈に挿入し、右側後肢血管全体の還流を行った。まず、基礎的実験として血管最大弛緩時の還流速度-還流圧の関係を求めたが、これらはすべてのラットの系統・血管床において直線的な相関を示した。血管最大弛緩時の還流圧は同じ系統のラット内において二つの血管床の間で有意差は認められなかったものの、高血圧モデルラットの後肢血管では還流圧が正常ラットに比べ有意に高く、陰茎血管でも同様の傾向を認めた。次に血管の構造的変化は血管作用薬に対する還流圧の変化を測定することで検討した。まずα_1受容体作用薬であるmethoxamine(MXA)を濃度累積的に投与して濃度反応曲線を求めた。最大効果が得られる以上の高濃度(過濃度)のMXAに対する収縮反応では、後肢血管において高血圧モデルラットが正常ラットに比べ有意に高い値を示した。このような差異は陰茎血管では認められなかった。
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