研究概要 |
腎細胞癌の増殖や転移は血管新生に依存しており,vascular endothelial cell growth factor(VEGF),basic fibroblast growth factor(bFGF),interleukin-8(IL-8),transforming growth factor(TGF)αやβ,thrombospondin-1(TSP-1)などの血管新生を制御する因子の解析が試みられている。一方,散在性の腎細胞癌との関連が示唆されるVHL癌抑制遺伝子は,転写因子Sp1を介してVEGFの転写を抑制したり,mRNAの安定性を減少させTGFαやβをネガティブに制御することが示され,血管新生を制御している可能性がある。さらに,細胞外マトリックス中で,ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター(uPA),uPA受容体,プラスミノーゲンアクチベーター・インヒビター-1(PAl-1)を制御することで,血管新生を抑制する可能性があり,VHL癌抑制遺伝子は,腎細胞癌における血管新生に重要な役割を演じていることが推察される。 腎細胞癌の血管新生因子を解析し,血管新生におけるVHL癌抑制遺伝子の関与を明らかにする目的で,1994年より1998年までに当科で腎細胞癌と診断され腎摘除術を施行された約50例とその摘出標本を対象ととし,パラフィン包埋切片を,bFGF,VEGF,uPA,uPA受容体およびPAl-1およびTSP-1,さらにCD-31の免疫組織染色を施行している。また,手術で得られた新鮮凍結標本を用いてMochらの方法(Cancer Res.58:2304-2309,1998)に準じたih situ hybridizationでVHL癌抑制遺伝子を検出する基礎検討中である。
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