研究概要 |
腎細胞癌の増殖や転移は血管新生に依存しており,vascular endothelial cell growth factor (VEGD), basic fibroblast growth factor (bFGF)などの血管新生を制御する因子の解析が試みられている。一方,散在性の腎細胞癌との関連が示唆されるVHL遺伝子は,転写因子Sp1を介してVEGFの転写を抑制したり,mRNAの安定性を減少させTGFαやβをネガティブに制御することが示され,血管新生を制御している可能性がある。さらに,細胞外マトリックス中で,ウロキナーゼ型ブラスミノーゲンアクチベーター(uPA), uPA受容体,ブラスミノーゲンアクチベーター・インヒビター-1(PAI-1)を制御することで,血管新生を抑制する可能性があり,VHL遺伝子は,腎細胞癌における血管新生に重要な役割を演じていることが推察される。 腎細胞癌の血管新生とVHL遺伝子の関与を明らかにする目的で,腎細胞癌組織における血管新生密度を抗第VIII因子抗体を用いた免疫組織染色にて評価した。一方,VHL遺伝子発現状態は,University of California San FranciscoのJoe Gray教授からVHL遺伝子(3p25.5)cDNAの供与を受け,Mochらの方法(Cancer Res.58:2304-2309,1998)に準じたin situ hybridizationで、VHL遺伝子の検出を試みている。実際にVHL遺伝子と第3染色体セントロメアに対するプローブを用いて,二次元標識蛍光in situ hybridizationを施行するために基礎的検討を行ってきたが,VHL遺伝子をプローブとしたin situ hybridizationが不安定であり再現性が得られず,現在のところ報告するに値する結果を得るには至っていない。
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