睾丸腫瘍の治療成績はシスプラチンを中心とした多剤併用の化学療法の発展により向上している。しかしIIIc期等の進行期症例においては未だ予後が悪い。したがってアンチセンス法による遺伝子治療などの新しい治療法の開発は臨床的に重要な意味を持つ。アンチセンス法を用いた遺伝子治療とは、特定のメッセンジャーRNA(mRNA)に対し相補的配列を持つアンチセンスオリゴヌクレオチドを用い、目的mRNAとアンチセンスオリゴヌクレオチドがDNA-RNA複合体を形成し特異的に遺伝子発現を阻害する方法である。われわれは睾丸腫瘍細胞におけるB-myb遺伝子およびA-myb遺伝子発現が強いことを発見した。本年度は、睾丸腫瘍株化細胞NEC8に各種のアンチセンスB-mybオリゴヌクレオチドおよびアンチセンスA-mybオリゴヌクレオチドを合成しいずれのアンチセンスB-mybオリゴヌクレオチドあるいはアンチセンスA-mybオリゴヌクレオチドが細胞内での遺伝子発現の抑制が強いかを検討した。特に今回は通常のSオリゴヌクレオチドよりも特殊に修飾したオリゴヌクレオチドが強い抑制作用を示すことを確認した。
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