本年度は、prostaspaninの生理機能を調べるために抗prostaspanin抗体の作製を最優先目標とした。前年度において、ラット及びヒト前立腺由来cDNAからprostaspanin cDNA(coding regionの全長)を増幅し、組換え型蛋白質の作成を試みたが、GST-fusion protein、His-tag proteinともにinclusion bodyを形成し可溶化が極めて困難であった。このため、prostatspaninの細胞外ループ2(EC2)の中で、ラットとヒトの間で保存性の高い配列-FTQVWN(T/S)TM-を選び、この部位に相当するペプチドを合成し、ポリクローナル抗体を作製した。このポリクローナル抗体は、ウェスタンブロットにおいて組換え型ラットおよびヒトprostaspanin(SDSを用いてinclusion bodyを可溶化してサンプルとした)を認識した。しかし、ラットの様々な組織(肝、腎、脾、脳、肺、性腺、前立腺、胃、小腸、大腸)の抽出液と膜画分を対象としてウェスタンブロット分析を行った結果、今回作成した抗ペプチド抗体は、nativeなprostaspaninを認識しないことが明らかとなうた。これはおそらく、native prostaspaninにおいては合成ペプチドのN(T/S)T部分のN(アスパラギン残基)に相当するアミノ酸に糖鎖が付加されており、その立体障害によって抗体が結合できないためと考えられる。今後、今回使用したペプチド以外の合成ペプチドを抗原として、再度、抗prostaspanin抗体の作成を試みる予定である。
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