前立腺細胞の男性ホルモンに依存した増殖過程において特異的に発現する遺伝子(群)を、サブトラクション法を用いてクローニングした。このうちAIEG322(prostaspanin[Pspan]と命名)はtetraspanin superfamilyと相同性を示し、前立腺と精嚢において比較的高い発現が認められた。前立腺におけるPspanの機能と前立腺癌マーカーとしての利用の可能性を調べるために、抗Pspan抗体の作製を最優先目標とした。ラット及びヒト前立腺由来cDNAからcDNAを増幅し、組換え型蛋白質の作成を試みたが、GST-fusion protein、His-tag proteinともにinclusion bodyを形成し可溶化が極めて困難であった。このため、合成ペプチドを抗原とすることを検討した。Pspanの細胞外ループ2(EC2)の中で、ラットとヒトの間で保存性の高い配列-FTQVWN(T/S)TM-を選び、ポリクローナル抗体を作成した。このポリクローナル抗体は、ウェスタンブロットにおいて組換え型ラットおよびヒトPspanを認識した。しかし、ラット組織のウェスタンブロット分析を行った結果、今回作成した抗ペプチド抗体は、nativeなPspanを認識しないことが明らかとなった。これはおそらく、native Pspanにおいては合成ペプチドのN(T/S)T部分のN(アスパラギン残基)に相当するアミノ酸に糖鎖が付加されているためその立体障害によって抗体が結合できないためと考えられる。今後、今回使用したペプチド以外の合成ペプチドを抗原として、再度、抗Pspan抗体の作成を試みる予定である。
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