研究概要 |
多くの尿路結石は体外衝撃波結石砕石術により結石を破砕することができるが、腎・尿管には多数の小結石が残る。また、5年以内に約50%の患者が尿路結石を再発することが知られている。さらに、長期間の体内カテーテル留置により尿中の結晶成分がカテーテル周囲に付着し、頻繁にカテーテルを閉塞させることが知られている。これらの結石の多くは溶解することが困難である。本研究では人に害のないバクテリアを用いて結石ならびにカテーテルに付着した結晶を体内において安全に溶解する方法を確立することを目的とした。 結果:実験1.臨床的に人から摘出したカテーテルを一度滅菌したのち、バクテリアと一緒にヒト尿中にて培養しながら溶解をこころみた。2週間の培養にて結晶量の約50%が溶解されていた。実験2.ラットを用いた長期実験モデル(1ヶ月間)により膀胱、腎臓の組織障害、尿路感染症の程度を観察した。また、血液検査もおこなった。組織障害はほとんど認めず、血液学的にも異常所見を認めなかった。ラット膀胱内にバクテリアと同時に入れた結石のうち、燐酸カルシウム結石が最もよく溶解されていた。シュウ酸カルシウム結石もわずかながら溶解されていた。ただし、尿酸結石、燐酸アンモニウムマグネシウム結石においては溶解できず、逆に結石の増大化を認めた。回収した結石を走査電子顕微鏡で観察したところ、結石表面に存在するThibacillus thiooxidansを確認した。細菌は、結石を溶解し、結石表面より中にもぐりこんでいるように見えた。結石溶解はバクテリアが産生する硫酸によりおこなわれていたと考えられた。産生された硫酸は膀胱から体外に排泄されることにより,組織障害をきたさなかったと考える。 以上より、一般の内服薬にて溶解不可能のカルシウム結石をこのバクテリアを用いて安全に溶解できることが判明した。
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