近年開発された焦点式高密度超音波治療(High Intensity Focused Ultrasound : HIFU)は、超音波を集中照射し壊死させる治療法で介在組織や隣接組織での熱損傷が無く低侵襲的である。このHIFU治療は腎癌への臨床応用の可能性が示唆されており正確な標的照射方法・治療中の照射域モニター・残存腫瘍の存在・安全性が検討課題と考えられるが、腎癌への詳細な検討は無い。家兎腎に移植したVX2 carcinomaへのHIFU照射実験にて課題を検討した。研究結果より1)HIFU超音波エコーにて十分な標的とモニターが可能で、超音波造影剤併用により精度の向上する可能性が示唆された。2)HIFU照射の標的体積と肉眼的照射体積に相関係数0.84の統計学的に有意な(P=0.0012)正相関を認め、正確な照射が示唆された。3)照射後の腫瘍部HE染色所見にて腫瘍部に腫瘍全体の強い熱変性や凝固壊死を認めた。4)不適切照射後の腫瘍部PCNA染色所見にて残存腫瘍を認めたが、照射条件の適切化にては残存腫瘍を認めなかった。5)照射中の出血や体温・循環動態の変化は認めず、HE染色所見にて周囲正常腎の損傷は軽微で境界は明瞭であった。我々の研究より家兎腎に移植したVX2 carcinomaに対するHIFU治療は安全で正確な標的照射やモニターが可能であり、適切照射条件により十分な治療効果が認められた。人腎癌に対するHIFU治療の臨床応用の可能性が示唆された。
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