研究概要 |
膀胱腫瘍摘除標本においてマクロファージの特異的抗体であるCD68モノクローナル抗体を用いて膀胱癌組織中に分布する腫瘍関連マクロファー(TAM)の組織内密度と分布状況を検討した。63例の標本(浸潤性膀胱癌23例、表在性膀胱癌40例)において検討した結果、腫瘍組織単位面積0.25mm2)あたりのTAM密度は浸潤性膀胱癌で154.22±11.98,表在性膀胱癌では49.05±7.76と有意に(p,0.0001)浸潤性膀胱癌でTAM密度が高いことがわかった。またその分布も表在性膀胱癌では希薄で局在的な分布であるが、浸潤性膀胱癌では高密度でしかも腫瘍深部まで浸潤性に分布していた。また、微少血管密度もCD32モノクローナル抗体を用いて検討したが、浸潤性膀胱癌で71.55±10.44,表在性膀胱癌では47.02±5.57と有意に(P<0.0001)浸潤性膀胱癌の方が微少血管密度が高いことがわかった。これらのTAM密度と微少血管密度の間には、正相関(r=0.30 p=0.02)がみられ、膀胱癌においてTAMが血管新生を促進させていることが示唆された。さらに、63例の患者をTAM密度の中央値で高い群と低い群とに分けたところ、5年生存率において有意にTAM密度高値群の方が低値群より予後不良であることがわかった。本研究の中には通常、遠隔転移を起こすことのないと考えられる4名の臨床病期口の表在性膀胱癌の患者ではい、肝臓、骨に転移が見られた患者が含まれていたが、これらの4人はいずれもTAM密度高値群であった。これらのことから、膀胱腫瘍の患者において腫瘍組織のTAM密度を測定することは治療計画や予後判定の上で有用と考えられた。また現在、強力な血管新生因子の一つであるThymidine Phophorylaseの酵素反応で生成される2-deoxy-D-riboseのマクロファージに及ぼす影響を検討しており、腫瘍組織に豊富なThymidine Phophorylaseによりどのような浸潤関連物質が誘導されるのかを培養系マクロファージモデル細胞THP-1を用いて検討している。その結果、preliminaryではあるが、MMP2および9あるいはTNF-alphaが2-deoxy-D-riboseで誘導発現を受けることが観察されている。さらに詳細に検討の予定である。
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