研究概要 |
本年度においては、まず中枢電気刺激モデルの確立を行った。これは、視床下部内側視索前野(MPOA)の電気刺激により、陰茎勃起を誘発し、海綿体内圧を測定するものである。また同時に、海綿体神経の電気刺激による勃起反応の測定も可能である。このラットモデルを用い、本年度は男性ホルモンの中枢及び末梢神経電気刺激による勃起反応に対する影響を検討した。 まず本年度は若年ラットを用い去勢後、経時的に中枢(MPOA)及び末梢(海綿体神経)神経刺激を行い勃起(海綿体内圧)の推移を検討した。去勢後、海綿体神経電気刺激により勃起反応は、2、4,8週後と徐々にその反応が低下した(去勢前0.57±0.05、2週後0.35±0.05、8週後0.30±0.05:海綿体内圧/血圧比)。去勢後8週においても非刺激時と比較し有意な上昇を認めていた。それに対し、中枢(MPOA)電気刺激による勃起反応は、2週後より著明に低下した(去勢前0.68±0.04、2週後0.12±0.02、8週後0.12±0.02:海綿体内圧/血圧比))。2、8週後では非刺激時と刺激時において有意差を認めず、つまり中枢刺激においては全く勃起反応が生じなかった。つまり去勢の影響は中枢刺激をを介した勃起反応に対しより強く現れた。 これらの結果より、MPOAに始まる勃起反応を司る神経経路を介した勃起反応が性ホルモンに依存的であることが示唆された。逆に海綿体神経の刺激による勃起反応では、性ホルモンに非依存性な部分があることが示唆された。 これまで、去勢の影響は雄の性行動において多くの検討がなされてきた。しかし純粋な勃起反応に対する影響を検討した報告は少なく、本年の我々の研究成果は、勃起を司る中枢への男性ホルモンの影響を解明する第一歩であると考えられる。 さらにホルモン補充によるモデルを作成し、性ホルモンの勃起中枢への影響をさらに詳細に検討中である。
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